ニュータイプという概念について最初に提唱したのは、シャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)とセイラ・マス(アルテイシア・ソム・ダイクン)の実父、ジオン・ズム・ダイクンである。宇宙という広大な生活圏を手に入れた人類は認識能力が拡大し、肉体的、精神的にあらゆる物事を理解する事が出来、それが全人類に広がった時、かつてない相互理解が可能となる。それは、新しい宇宙空間という生活圏で生活するために人類がとり得た進化という形である、という主旨であった。
そしてジオン・ズム・ダイクン暗殺後も、ニュータイプという概念は常に語られているが、その時代や社会背景、個人の思惑などにより認識内容は全く異なっている。 特に一年戦争期においては地球連邦、ジオン公国共にニュータイプの存在を認める者はまだ少なく、ジオン公国総帥ギレン・ザビは父デビン公王の前で「ニュータイプ」という言葉は方便で使用しているだけで、真のニュータイプの開花はずっと先の事である、と明言している。逆に地球連邦のレビル将軍やジオン公国キシリア・ザビ少将等は、周りの反感を買いながらもその存在を絶対的に認め、有効な戦術として積極的に活用している。
このニュータイプと呼ばれる者達は、総じてオールドタイプと比較し桁外れな直感力と空間認識能力を持ち、距離を隔てていても他者を認識して意思を疎通する事を可能としていた。 また、ニュータイプを研究していたフラナガン機関は、ニュータイプにはオールドタイプにはない特殊な脳波があることを突き止めている。その脳波はサイコウェーブと呼ばれ、サイコミュ・システムにより増幅させ、サイコミュ兵器のコントロールも可能として いる。兵器の遠隔操作能力を発揮出来たニュータイプは、通常では考えられないような戦果を生み出している。以後、このニュータイプに対応した専用機の開発も進められ、大戦後はそれらの技術を使い、地球連邦軍による ニュータイプを人工的に作り出そうとする強化人間の研究まで行われる事となっていった。
これらのニュータイプは、どの様に生まれ、どの様な成長過程において発生する能力なのかは定かでない。しかし、歴史上に名を残すニュータイプ達が存在する時期には、一つの例外もなく必ず戦争が起こっている。地球連邦軍のレビル将軍は、「ニュータイプとは戦争をしなくてもすむ人間達の事だ」と残しているが、戦争がない時期にはニュータイプの存在は確認されていない。事実、平和な時代が永かった後のコスモ・バビロニア戦争期ではニュータイプという概念そのものが薄れてきており、ザンスカール戦争期では、既にニュータイプという存在自体すらも遠い昔の伝説ともなってしまった。レビル将軍の言葉は、ニュータイプ論提唱者ジオン・ズム・ダイクンの概念を体現した形ではあるが、この様な事実関係を考えると、「戦争」が「ニュータイプ」を生み出しているという解釈も成り立つのではないだろうか。
ちなみにZガンダムのパイロットとして、精神が崩壊するまでグリプス戦役を戦い抜いたカミーユ・ビダンは、ニュータイプとしての能力が最も高いのではないか、とされている。このカミーユは、死んだ者達の意思を集めて自分の力にしたり、ビームサーベルを巨大化させたり、敵側のMSを制御が出来ない状態に陥らせるなど、様々な超常的現象を引き起こしている。アムロやカミーユは、「他の人より多少勘に優れているだけ」だと言うが、これらの現象からも分かるように、ニュータイプは現在でいうところの超能力者ではないかとの見方もなされている。
いずれにせよニュータイプ達は、その者の意思に関わらず戦いの渦に引き込まれ、その類まれな能力を戦争の道具として使われていき、そこで様々な悲しい物語を生み出している・・・。