メカニズム解説・ガンダムチャンネル

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メカニズム解説

モビルスーツ誕生

圧倒的な物量を誇る敵の兵器を無力化させた状況で、数に劣る自軍の兵器が最高の戦果を上げる。このあまりにも非現実的なプランを実現させる兵器として、モビルスーツはこの世に誕生した。

U.C.0071、ジオン公国と地球連邦の軍事的緊張が高まる中、ジオン公国軍は新型機動兵器の開発に着手する。この新兵器開発は、そもそもは U.C.0069、ジオン公国の物理学者Y・T・ミノフスキー博士により、ミノフスキー粒による特殊効果が確認されたのが発端とされる。この効果の一つに、粒子を一定濃度で散布した空間では、レーダー類の精度が著しく低下し、既存の光学観測機器をほぼ無効化させてしまう特性があった。 この特性を利用すれば、第二次世界大戦以来、技術と実績を積み上げてきた誘導兵器のほとんどを無力化できる。圧倒的な軍事力でジオン公国に圧力をかける地球連邦に対し、ほとんど打つ手がなかった公国軍は、この特性に注目した。公国軍と地球連邦軍の絶対的な戦力差も、これを利用すれば打開することが出来る。地球連邦との開戦が現実味を帯びる状況で、公国軍がこの特殊な状況下でも戦果を上げられる兵器を欲するのは必然であった。そして、この新兵器のベースとされたのが、当時コロニー建設現場で活躍していたコロニー建設用重機であった。

コロニー建設に用いられた空間作業ポッドを元にして進められた新型機動兵器の開発は徐々に人型に近づき、いつしかその形状から巨大な機動服「Mobile-S.U.I.T.」と呼ばれるようになった。S.U.I.T.には「Space Utility Instruments Tactical(戦術汎用宇宙機器)」の意味も込められていたが、これはジオン軍があとから付けたものと言われている。

U.C.0073、ついにモビルスーツの1号機、MS-01が完成。形式番号のMSとは、当然Mobile S.U.I.T.の頭文字を取ったものである。手探り状態で始まったモビルスーツ開発、その1号機となるZI-XA3に課せられた最大の使命は「二足歩行システムの完成」であったと、多くの資料には記されている。 上に掲載した写真はS.U.I.T.プロジェクト最初期のもので、無重力(または微重力下)での歩行試験の様子を記録したものと言われている。脚部機構の動作確認の風景だと思われるが、無重力下で作業する作業員にまざり、右下で作業員の指示を受けているのは、S.U.I.T.プロジェクトのパイロットだろう。ノーマルスーツの形状と腕の公国旗から公国軍から派遣された人物だと思われるが、詳細は定かではない。

S.U.I.T.プロジェクトの大きな一歩。その一歩が来たるべき一年戦争へのカウントダウンになっているとは、希望あふれる技術者たちの顔からはうかがい知ることは出来ない。

史上初のモビルスーツ

ジオン公国軍の開発した超兵器、モビルスーツ。その姿は当時の主力兵器と比べてもあまりにも異質である。

ジオン公国と地球連邦との軍事衝突が現実味を帯びるなか、地球連邦に勝利するには地球に直接軍隊を送り込むのは不可欠であった。 だが、コロニー国家であり、資源小国であるジオン公国にとって、陸がないのに陸軍を、海がないのに海軍を組織するのは不可能であった。そこで考えられたのが、宇宙では宇宙戦闘機、地上では戦車と渡り合える高い汎用性を持つ兵器の開発であった。多くのプランを経て、新たな兵器の形として選択されたのが自由な四肢を持つ人型機動兵器であった。

MS-01は史上初のモビルスーツであるが、モビルスーツとしての機構はこの時点でほぼ完成しているが、核融合炉の小型化が間に合わず、既存の小型核融合炉をそのまま流用している。しかし、厳重な保護システムに組み込まれた従来の核融合炉では本体に収まりきらず、背面にはみ出すような形になっている。また、背中には同時に宇宙空間用のスラスターも装備され、バックパックはさらに巨大化。さらに、既存の小型核融合炉では必要出力を得られず、実験中はいつも出力不足に悩まされていたと当時の開発記録には記されている。

核融合炉の小型化の遅延から開発の遅れる上半身に較べ、下半身の開発は順調に進んでいたようだ。脚部機構の動作確認の際には、既に装甲材が取り付けられ、のちに制式採用されるMS-05とほぼ変わらない形状となっているのは興味深い。フレームがむき出しとなった上半身とほぼ完成形の下半身を較べれば、その差ははっきりと分かる。なお、核融合炉が結局完成したのはMS-04、すなわちMS-05ロールアウト直前のことであったとも言われている。

このMS-01で得られたデータにより、MS開発は急ピッチで進み、公国軍はわずか1年足らずで初の制式採用MS、MS-05ザクIを完成させ、MS開発は新たな局面を迎えることになる。

(J・ベルガー U.C.0095)

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