エゥーゴとアナハイム・エレクトロニクス社による共同開発計画「Ζ計画」で開発されたアナハイム・ガンダムのひとつ。リック・ディアス(γガンダム)から数えて4番目に開発されたため、その開発コード「ζ」からΖガンダムと名付けられた。
宇宙世紀0087年、エゥーゴと協力関係にあったアナハイム・エレクトロニクスはリック・ディアスの完成と同時に次世代超高性能モビルスーツ開発計画Ζ計画を発動させる。MSN-00100 百式、MSA-005 メタスの試作後、アナハイムはエゥーゴの象徴たる超高性能機Ζガンダムの開発に着手したが、設計は難航した。しかし、ティターンズによって開発されたRX-178 ガンダムMk-IIが同社に持ち込まれた事で、状況は一変する。ガンダムMk-IIは機能的には第2世代モビルスーツに到達していない機体ではあったが、そのムーバブルフレームの設計思想は斬新であり、可変MSに要求される機能を十分に備えていたためである。また、添えられていた民間人のカミーユ・ビダンの手になるメモ程度の設計案が引き金となり、設計は急速に進展していった。
こうして完成されたΖガンダムは、ウェイブライダー(WR)と呼ばれる巡航形態への変形能力を備えており、宇宙空間から重力下までの連続運用を可能とする破格の汎用性を持っていた。同機に採用されたムーバブルフレームの基本構造は、コピーが容易である上に、ガンダムMk-IIのものよりも高い強度を有しており、以後に開発されたMSの殆どが、どこかにこの構造を取り入れているといっても過言ではない。これによりΖガンダムは機体構造そのものを変更し、複数のミッションに迅速に対応することが可能となった。この機能は既存のモビルスーツを遥かに凌駕する機能であり、便宜上第3世代モビルスーツに分類される。無論、第2世代MSで確立されたオプション対応能力も、そのまま継承されている。
脛部にはメインジェネレーターを兼ねた2基の熱核ジェット/ ロケットエンジンを搭載すると共に、背部にはAMBACシステムとスラスターとしての機能を併せ持つロングテールバーニアスタビライザーを装備、大気圏内外において優れた加速性能を発揮する。変形機構が集中するボディユニットには既に余分な空間がなかったために脛部にジェネレーターを搭載しているが、この部位は大気圏突入時に最も衝撃波の影響を受けにくいポジションであったことも一因である。トータルでの出力は旧世代のMS数機分に匹敵する高出力を有し、片脚を喪失した場合でもある程度の戦闘能力を維持することが可能である。また、MS形態時には背部ムーバブルフレームに接続されるフライング・アーマーは換装も可能であり、大気圏内での性能に比重を置いたウイング・バインダータイプのものも用意されている。
装甲材質は、リック・ディアスや百式と同様にガンダリウムγを使用し、更なる軽量化と高剛性を実現させている。この素材の採用がなければ本機は自重によって機体各部の運動性を損ない、変形の所要時間を短縮することもできず、実用機としては完成できなかったと言われている。大気圏突入を行うという機体特性上、突入時の空力加熱を考慮し、WR形態時に機体下面に形成されるシールドユニットを中心とした外装には入念な耐熱処理が施されている。このシールドはビーム兵器に対する防御力も高く、ビームサーベルによる斬撃や、数発程度のビームの直撃に耐えられたようである。但し、WRの一部を構成するパーツでもあったことからデリケートな構造を有しており、整備性に若干問題が有ったとされる。これとほぼ同様の機構が、後発機であるΖプラスシリーズに継承されている。
本機の変形機構は当時の可変MSとして傑出した完成度を有し、WRへの変形機構を有しながら通常のMSとしても優れた性能を発揮することができる。MSとWRでは基本構造と必要とされる技術が全く異なるが、故に双方の機能を併せ持つことで本機は戦術的な意味を持つ。これは兵器ユニットとしての性格を任意に変更可能なことを意味し、旧来のMSにおいては実現不可能な戦術だったためである。本機は、自らのMSとしての戦力を自力で戦線に空輸することが可能であり、RX-78 ガンダムの持っていた汎用性を、抜本的な形で実現したという事ができる。WR形態では加速用に後方に集中していた14基(スペック上は11基)のスラスターが、MS形態では背部・腰部・脚部に分散する。姿勢制御バーニアは8基と控えめな部類に入るが、各バーニアの出力は標準よりも高く、ベクタースラストと柔軟な関節駆動によって空間戦闘の面においても優秀な性能を発揮する。このためパイロットの技量次第で加速性を生かした一撃離脱から白兵戦までのオールラウンダーとして運用することが可能だった。
この時期、MSは攻撃能力拡充のためジェネレーターやビーム兵器の高出力化や機動性向上のためスラスターの増設、またそれらを稼動させる為の補機類の搭載に伴う機体の大型化が一般的な傾向となっていた。これはスペックのインフレーション化を招き、開発コストの高騰化を招いていた。本機もまたその例外ではなかったが、機体の軽量化とジェネレーターの大出力化によって絶妙にバランスしており、MSの基本性能である運動性と火力を両立させた点が特徴と言える。その機体特性はむしろパワーウェイトレシオが重視されたU.C.0100年代以降の機体に近いとされ、系列機の優秀さも相まって高い評価を得ている。
Ζガンダムは兵装の面でも全てのレンジに対応するための装備を一通り揃えた万能性を特徴としている。主兵装のビームライフルはEパック方式、副兵装は実弾系、追加兵装のハイパー・メガ・ランチャーは小型ジェネレーター内蔵と高火力を有しながらもMS本体への負担を最小限に留める配慮がなされている。グリプス戦役末期には特定の局面においては本機を上回る性能を持つ機体も少なからず登場した。しかし、本機は広範な運用能力と高性能を高いレベルで両立させており、依然として高いアドバンテージを有していた。第一次ネオ・ジオン抗争時にも、引き続きアーガマ部隊のガンダム・チームの一角として最前線に投入されたことからも、本機の性能が優秀なものであったことが伺われる。
このように優れたパフォーマンスを見せたΖガンダムであったが、複雑な機体システム故の高コスト、劣悪な整備性といった問題も残されており、そのままの形で量産化に移行することは不可能だった。機体挙動自体も非常にピーキーで先鋭的な特性を示した為、操作性が低下した点も理由の一つである。特に後者に関しては、後に簡易サイコミュの一種である試作型バイオセンサーが搭載されるなど、操縦系統に改良が施されているが、根本的に搭乗者を選ぶ傾向の機体であった点に変化はなく、宇宙世紀0091年に完成された系列機リ・ガズィにおいても同様の問題を抱えていたという。しかしグリプス戦役当時、標準装備のまま大気圏再突入が可能な唯一の機体でもあり、後に多くの系列機を生み出している。
『機動戦士Ζガンダム』の作品中では、主人公カミーユ・ビダンの乗機として活躍し、第21話以降の物語後半の主役機をつとめる。 彼がそれまで搭乗していたガンダムMk-IIが、ティターンズのジェリド・メサとマウアー・ファラオのガブスレイの前に小破された際、ウェイブライダー(WR)形態で登場、アポリーの操縦で初めて実戦投入されこれを撃退する。小説版ではガブスレイ撃退後、カミーユの目の前でMS形態に変形し、アポリーが地球から帰ってきたカミーユへの挨拶としてカメラアイを光らせるというアクションがある。これ以後、カミーユがメインパイロットとなり、エゥーゴの主力としてグリプス戦役を戦い抜いた。劇中ではMS形態とWR形態を巧みに使い分け、キリマンジャロ降下作戦ではWR形態のまま、百式を載せて大気圏に突入している。
物語終盤では、ニュータイプ能力は最高と原作者の監督の富野由悠季に評されるカミーユのニュータイプ能力とバイオセンサーが共鳴しビームサーベルを巨大化、ビーム兵器を弾くオーラを機体に纏い、敵機であるハンブラビの索敵モニターに干渉しレーダー混乱させている。最終的には死者の思念を取り込み無限に性能を拡大させ、パプテマス・シロッコのジ・Oを不可思議な力によって制御不能にしオーラを纏ったWR形態で死者の思念と共に体当たりするなどの、スペックでは実現できない超常的な能力を発揮した。 劇場版では、発射寸前のコロニーレーザー内での乱戦の中ではビームサーベルを投げ、回転するサーベル本体の部分にビームライフルを撃つ(当てる)ことでビームを拡散させる「ビーム・コンフューズ」という技を使い、キュベレイのファンネルをまとめて打ち落とす場面が追加されている。
『機動戦士ガンダムΖΖ』ではTV版『機動戦士Ζガンダム』から繋がる形で物語序盤の主役機をつとめ、第一次ネオ・ジオン抗争に投入されガンダム・チームの一角を担う。メール・シュトローム作戦後、本機は修理もままならない状態でアーガマに置かれていた。同艦がシャングリラに寄港した際、ジャンク屋を営むジュドー・アーシタとその仲間達がこの機体に目をつけ、盗んで売り払う為に侵入した際、ジュドーは成り行きから本機に搭乗する。この際、彼はとても初めてとは思えぬ操縦でΖガンダムを動かし、ティターンズの残党ヤザン・ゲーブルを撃退する。彼らはその後アーガマの乗員となり、ジュドーは本機のメインパイロットとなる。ジャンク屋の元締めであるゲモン・バジャックが搭乗するゲゼと対戦した際にはボクシングの構えをとり、パンチの連打を繰り出すといった肉弾戦も披露している。搭乗者を得たΖガンダムは再び同艦の主力として活躍、アクシズの巡洋艦エンドラのモビルスーツ隊の襲撃を幾度も退ける。しかし、新鋭機ハンマ・ハンマの猛攻によって頭部を破壊され、本機は一時戦線から離脱する(この戦闘の直後、ジュドーは新鋭機ΖΖガンダムを受領、そのまま同機に搭乗する)。また、ジュドーの友人イーノ・アッバーブが彼の危機を救う為に、本機に急遽ザクIIの頭部を取り付けた状態で出撃したこともあった。これはあくまで応急措置であり、各インターフェイスも満足に機能しなかったが、イーノはガザC部隊を相手に善戦している。尚、このザクヘッドタイプのΖガンダムは「Ζザク」と呼称される。
その後、修復を終えたΖガンダムはアーガマの志願兵ルー・ルカの乗機として戦線に復帰する。しかし、アーガマの地球降下作戦時には再びジュドーが搭乗、戦闘中に誤って大気圏に突入してしまったエルピー・プルのキュベレイMk-IIと共に大気圏を突破している。地上での行動時にも、Ζガンダムのウェイブライダーは、ΖΖガンダムのGフォートレスよりも小回りが利くため、ジュドーはΖガンダムに搭乗する場面があり、カミーユに劣らぬ活躍を見せる。
第一次ネオ・ジオン抗争終盤、アクシズへと突入した際にクィン・マンサの攻撃を受け、同機のオールレンジ攻撃の前に機体は沈黙するが、駆けつけたフルアーマーΖΖガンダムによって窮地を脱する。アクシズ陥落の際、搭乗者を失いコクピットを開放したクィン・マンサを破壊するが、Ζガンダムはこの戦闘で中破し、放棄されてしまう。
『ガンダム新体験-0087-グリーンダイバーズ』では、3号機として白地にピンクのカラーリングの機体が登場する。軍上層部の思惑で、地球に降下したシャトルの回収任務に当たった際の1度きりの出撃だったとされていて、パイロットの「カラバ兵士」の声を、古谷徹が担当している。公式には断定されていないが、機体のマーキングからアムロ・レイを連想させるものである(Ζプラスやνガンダムに書かれている、アムロのパーソナルマークに似たマーキングがある)。この「カラバ兵士」とΖガンダムは映像作品『GUNDAM EVOLVE ../9』にも登場し、「ホワイト・ユニコーン」および「ホワイト・ゼータ」なるコードネームが与えられている。安彦良和によって新たに描かれた「ホワイト・ユニコーン」の容貌はアムロ・レイのそれに酷似しており、より暗示の色を強めている。